葡萄つくり事始

[大阪へ引越し]  2014年1月、仙台から大阪に29年ぶりで戻って来ました。新築した家の外構工事が終わっていなかったので2014年秋までは、仙台から運んできたブドウの木を鉢に仮植状態のまま過ごし、その後定植しました。その間一番大きなチャナーを枯らしてしまいました。
 現在はロザキ(露地植え)・C.G.88435(露地植え)・リザマート(鉢植え)の3株体制。
そうそう仙台では収穫間近になっていつも現れていたハクビシンがこちらでは出てきません。毎年がっかりさせられていたので大助かり。 現在までのところ獣類は現れていませんが、そのうち嗅ぎつけてくるかも。
 まず初めに栽培品種を紹介しておきます。共通事項として、現在栽培中の品種は2倍体ヨーロッパ系品種だけで、米国系品種ならびに雑種は過去に栽培した品種です。
 ロザキを含めジベレリン・フルメット等のホルモン剤処理はしていません。なお画像は全て当方で撮影したものです。

キャンベルアーリー Campbell Early (米国型雑種)
キャンベルアーリー  アメリカのジョージ・W・キャンベルがムーアアーリー×(ベルビレーデ×マスカットハンブルグ)を交配して作出。1897年(明治30年)に川上善兵衛により我が国に紹介された。
 後に現われる巨峰にはこの品種の遺伝子が引き継がれており、巨峰系4倍体品種には多かれ少なかれキャンベルアーリーの香りが含まれている。
 黒色で果粒重は7g位で球形。果房重は400g位で肩の張った房。果皮は厚く、果肉は軟らかい塊状で果皮は離れやすい。
 糖度は16度程度で高くはないがラブラスカの芳香強く、完熟すると濃厚になり旨みが出てくる。酸味も中程度有り。
 開花は当地仙台で6月上旬。樹勢は弱いが花振るいが強い。
 散光着色品種。着色が完熟より一週間位早く終わるので収穫は完全着色の一週間後に行う(当地では9月初旬)。裂果はない。香りが強いので収穫前には蜂が寄って来る。
 耐寒性は強いが、前年の結果量が多いと樹勢を消耗し翌年眠り病になる。
 病害虫は少なく作りやすい。これまで経験した害虫はブドウスカシバのみ。ブドウスカシバは越冬中の幼虫がいる枝を徹底的に剪定すると次第に生息密度が低くなってくる。
 '06年4月24日、友人に貰われてゆきました。その後友人の畑で芽が出て、蕾も着いているとの連絡を受けました。

スチューベン Steuben (米国型雑種)
スチューベン  ウェイン×シェリダン
 米国で作出された赤味のある紫黒色の円筒〜円錐形中房ブドウ。果粒重は4g位で球形。果房重は250g位。日本には1954年に導入された。
 糖度は高く18〜23度に達し、酸は少ない。米国型雑種だがラブラスカ香が無いので、マスカット・ベーリーAと並び評価が高い。
 ラブラスカ香が無い上に比較的耐病性が高いので、その性質を利用するため欧州系品種と交配される事が多い。
 開花は当地で6月中旬。花振るいがないのできれいな房に仕上がる。散光着色品種。果肉は軟らかい塊状。極く微細な種があり良い感触はしないがそのまま食べざるを得ない。裂果はない。収穫は9月下旬。
 耐寒性は米国系品種にしては強くなく、結果過多で凍害にあい翌年眠り病となる。
 病害虫は少なく作りやすい。これまで経験した害虫はブドウスカシバ。病気はさび病。さび病は秋口に発病するが、2〜3年病葉を徹底的に切除したらそのうち発病しなくなった。
 去年のキャンベルに次いで、10年以上我が家の庭で育ったこの樹も、この春('07年5月)友人の紹介で貰われてゆきました。

ノースレッド North Red (欧米雑種)
ノースレッド  セネカ×キャンベルアーリー 
 農水省作出の赤褐色欧米雑種。果粒重は4g位の球形。果房重は250g位。赤色で耐寒性強く、早熟な品種はめずらしい。
 果肉は塊状で果皮との分離は良い。
 糖度はキャンベルアーリーより高く、ラブラスカ香がある。
 開花期・収穫期はキャンベルアーリーとほぼ同じ。花振るいが強い。直光着色品種に近い明るさが必要。果粉は厚い。裂果はない。
 多くの点でキャンベルに似るが、収穫時期の見分け方に関しては異なり、着色すれば甘みがのり酸味も抜けているので、着色だけで収穫期を判断できる。キャンベル同様成熟すると蜂が寄って来る。
 作ってみて初めて分かったこのブドウの大きな特徴は、上記二品種に比べて非常に収量が少ない事。つまり樹の大きさ・樹齢の割には房数を着けることができない。成らせ過ぎると鮮紅色にならず色が薄いのでこの品種の見栄えの良さが現れず、また甘みものらない。樹勢も強いので狭い場所では作りにくい。
 病害虫は多い。これまで経験した害虫はブドウスカシバ。病気はさび病と黒痘病。黒痘病にはキャンベルより弱い。黒痘病は予防のため芽出し直前に石灰硫黄合剤を散布し、梅雨頃発病したら局所的にジマンダイセン等を散布し抑え込む。

チャナー 乍那  (欧亜品種)
乍那  アルバニアから中国を経てわが国に紹介された品種。
 成熟は9月上旬。ノースレッド・キャンベルアーリーより約1週間早い。
 果皮の色は鮮やかな赤色から徐々に赤紫・黒に変化。果粒の形は球形。
真っ黒くなった乍那  味はスチューベンと似ていますが、もう少し上品で爽やかにした感じ。巨峰のようなラブラスカ香やどぎつい甘さは無く、さっぱりしています。
 肉質は崩解性で、果皮は薄く密着しているのでむくのは困難ですが皮ごと食べられます。バラディーほど薄くはありません。香りはありません。
 花穂は長大ですが花振いする性質があります。果粒がキャンベルより二回り程大きいので、粒揃いの良い房に仕上がるとかなり重さになります。
 果粒付け根部分で裂果しますが果汁は垂れません。ヨーロッパ系のわりには耐病性があるようです。
 糖度はベニバラードよりは低いですが、甘すぎずデザートには適当です。巨峰系四倍体品種の強烈な甘さを期待すると裏切られます。欧州系ブドウが分かる人向き。
 見てくれに反して、ほんのり甘い爽やかブドウといったところ。毎年仙台の夏の終わりを教えてくれるブドウになりそうです。
 当地では'10年・'11年と雨が少なく猛暑が続いたので、やっとこの品種の特徴が出てきたようです。

ロザキ Rosaki (欧州品種)
ロザキ  アラビアで栽培されていた古典品種。現在までヨーロッパ・アメリカ・オーストラリアの主要生食品種。大粒白色で肉質は崩解性。香りはない。
 果皮は薄いが硬いので、皮ごとは食べにくいがむくのは簡単。肉質は柔らかく果汁が多い。果肉の歯触りはムチッとした感触。欧州種にしては甘味が強い。これらの性質はほとんどロザリオビアンコと同じ。
 酸味が少しだけ残っているうちに収穫すると、甘酸のバランスがちょうど良く食べごろとなる。
ロザキ  地植え後数年はベト病が発生したが、'10年と'11年は雨が少なく猛暑だったためか露地でも黒痘病・ベト病とも広がりが見られず完全無農薬で栽培。
 花振いが少なく受粉良好なため摘粒が必須。ジベレリン・フルメット等のホルモン剤処理をしていないので巨大な粒にはなりませんが、肩の張った見栄えの良い房になり白色古典品種ゆえの高級感が醸し出される。
 さすが世界中でメジャーな品種だけありボリュームのある房になりました。日本で一般的な摘粒等外見を整える作業をしたらそれなりの小さくまとまった房になり、せずにそのまま大きくしたらワイルドでマーケットでは売っていないような見応えのある房になります。
 なおロザキの無病葉は、柔らかく浅いグリーンで非常に美しい。米国種の葉のような硬さはなく、特に手のひら大の葉はしなやかで黄緑を帯びていて、すぐに他品種との区別がつく。
 2015年、移植後初めてロザキの試食用房を9月下旬に収穫し食してみたら充分糖度が上がっていました。まるで仙台で作っていた物とは別物のよう。さすが大阪の日照は強烈でしかも梅雨明け後は雨もほとんど降らなかったからでしょう。ベト病も一休みしていました。 曇天と霧雨が夏中続く仙台の気候との違いでしょう。
ロザキ
 2017年、かなり摘房しましたが、最終的に9房成らせました。この品種は長梢剪定が必須で芽傷処置をしていないためか発芽率が良くなく出蕾時期には物足りなく感じますが、その分摘房が少なくて済みます。
 9月13日から消費する分だけ1房づつ収穫していますが、最初の房から充分に糖度は出ています。最終房がいつになるか分かりませんが、涼しくなってきたので糖度が上がらないか期待しています。
 秋の彼岸のお供えにピッタリの時期ですので、ロザキとC.G.88435の大きな房を持って行くとびっくりされました。ちょうど1番上の粒から1番下の粒までの距離はティシューの箱の長辺と同じでした。 比べて食べてもらったら、糖度はロザキの方が高く、歯ざわり・食感はC.G.88435が好評でした。
 梅雨明け前から8月中は、ほとんど雨らしい雨が降っていないので、露地でもまったく病気が広がらず楽でしたが、涼しくなってきたうえ台風等で時々雨に見舞われるので徐々に広がってきています。
 9月27日、ロザキの最終4房を収穫しました。 黄色味が強くなっていて最大房は540gありました。食べてみるとこれまでの房より糖度が上がっているように思います。ロザキ自体ヨーロッパ品種ではかなり糖度が高い品種のようですが、ほぼ甲斐路並の甘さが出ています。ここまで甘くなくても良いのですが、とりあえず大阪で栽培してみて糖度に関してはクリア出来たと思います。気を付けることは結果過多と病気での落葉くらいでしょう。

C.G.88435 (欧州品種)
C.G.88435  Almeria(アルメリア)×Cardinal(カージナル)
 アルゼンチンで作出。
 2016年8月初日に初めてC.G.88435を味見してみました。黄色味を帯びた粒は充分糖度が出ています。緑色が強い粒はまだ酸味が強いので色で判別可能です。
 しかしこの品種は裂果がひどく、チャナーと異なり縦に割れます。果汁は垂れませんが、裂果の率はチャナーより遥かに高いです。その代わり充分皮ごと食べられます。果皮はロザキよりパリパリしていて味と食感は好評で、粒単位で切取り自家用に供することになりそう。これまで自作した品種中最高の品質。
 花振いは少ないが無核果が多く摘粒は必要。
 品質を確認できたので来年からは気を入れて作る価値がありそう。
C.G.88435 2017年は3房成らせてみました。去年の果粒は白地に青味がかかった珍しい色をしていましたが、今年は黃緑色の普通のブドウの色です。
 房の形は肩の張った円錐形で直径の割に長さが短くズングリしていて重量感があります。中央部でくびれた細長い形にはなりません。また果軸が太く10ミリ近くあります。
 生育途中で裂果粒や無核果を除いたらちょうど良い粒数になり収穫までたどり着けました。果粒の大きさは手頃で、裂果は思っていたより少なく心配は杞憂となりました。
 糖度は8月中旬で充分出ていて、素直な甘さがデザートにピッタリです。
 皮はバラディー・マニキュアフィンガー並みの薄さで、パリパリ皮ごと食べるタイプです。
 樹勢もそれほど強くなく狭い場所で作りやすい品種です。大阪に戻って、それまで鉢植えしていた株を露地植えし三作目となりますが、新梢が暴れることもなく適度な伸び方をしています。肥料はこれまで与えたことはありません。そのためか葉色は他品種よりかなり黄色味が強く特徴的です。葉がロザキに比べてやや厚く、アメリカ系品種ほどではないが硬い感じ。
 これまで作ったブドウのうちでは最高レベルの品質と言えます。典型的な欧州系ブドウという感じ。
 殺虫剤を散布していないのでスリップスにかじられていますが、来年は袋掛けを徹底して防除するつもりです。なおこれまでに使用した薬剤は、3月に石灰硫黄合剤とベンレートの混合液、6月と7月にジマンダイセンを各1回です。

リザマート Rizamat (欧州品種)
リザマート  Katta Kourgan(カッタクルガン)×Parkent(パルケント)
 ウズベキスタンで作出。
 5年ぶりの更新です。 リザマートを初めて収穫しました。初め鉢で作っていましたが3〜4年くらい前に管理が楽な地植えにしました。建物の北東側でそれほど条件はよくありません。午前中だけ陽が当たっています。
 今年初めて2房収穫しました。最初の1房は粒で収穫して味見。期待を裏切らなかったです。
 2022年9月2日、房のまま2房めを収穫。大阪で作っているので着色はよくありません。お約束どおりきっちり割れます。率としては3割位でしょうか。自家用で食するから平気ですが売り物にはなりません。当然店で見かけたことはありません。
 「幻のブドウ」とか「ロシアのセレブ御用達」とかの装飾句で表現されるブドウですが、なるほどね〜という感じ。 基本的には欧州系の味ですが、適度な甘さだけではなくまろやかさがあります。以前ニュウナイという品種を食べたことがありますがそれに通じるものを感じます。
 味はマニキュアフィンガー(ユニコーン×バラディ)に優るようです。粒・房のサイズもリザマートのほうが大きくなります。果軸は長いので袋掛けは楽にできます。粒の着き方は荒いです。
 食べると皮が少し残りますし果肉はカチカチではありませんが間違いなく皮ごと食す品種です。
 自家栽培でしか味わえない希少性がこのブドウの醍醐味でしょう。


2007.05.04

乍那 ノースレッド ロザキ
 やっと暖房がいらなくなりました。寒い間ほっとらかしていた庭仕事が始まります。
 既に剪定は去年中に終え、石灰硫黄合剤とベンレートの散布も終わっています。  数日前から芽が動き始めました。
 綿毛に包まれた新芽が開いたところです。
 写真は左から開いた順に乍那・ノースレッド・ロザキです。今年はスチューベンが貰われていったので3種類だけになりました。

2007.08.13

チャナー チャナーの果房 赤くなり始めたノースレッド
 忙しくて更新が滞っていました。
 すっかり大きくなり着色も進み、果粒の肥大もそろそろ止まる頃です。今年は摘粒を怠ったので粒の肥大が芳しくありません。あと3週間位で収穫時期になります。
 仕立て方は写真のように、水平に伸ばした結果母枝から新梢を垂直に伸ばしています。チャナー・ノースレッドとも7〜8房着いています。
 例年行っているスカシバ食入枝の剪定除去が有効だったのか、今年は所々にエンジ色の卵は見つけたものの、チャナーには被害がなく、ノースレッドに1個所あっただけです。しかも結果枝でなかったため犠牲になった果房は現在まで1つもありません。殺虫剤を使っていないので上出来です。
 写真は左からチャナー・着色が進むチャナーの果房・ノースレッドです。

2007.08.19

チャナー  チャナーの着色が日一日と進んでいきます。果粒も少しづつですが大きくなっています。米国系品種は着色が始まったら、果粒の成長は止まりますが、チャナーは着色しながら果粒の肥大も同時に進行しています。
 一昨日雨が降ったので裂果が心配でしたが一粒だけでした。裂果した粒を食べてみると大分甘味がのってきています。すでに酸味はありません。

2007.08.25

チャナー チャナー チャナー  チャナーの着色と肥大が進んでいます。後1週間位したら真っ黒になります。

ノースレッド ノースレッド  ノースレッドはやっと着色が始まったなと思うや否や、ハクビシンらしき侵入者に数房やられてしまいました。色付きのいい房から食べていきます。
 果粒の肥大はすでに終わっています。

2007.09.09

チャナー チャナー  チャナーを4房収穫しました。今年は夜温が下がらないためか真っ黒にならずじまいでした。
 すべて350g〜370gです。裂果粒が数粒づつ見つかりました。

ノースレッド ノースレッド  ノースレッドは甘味が強いので、夜はハクビシン、朝はムクドリ、昼はスズメバチに狙われ散々です。12〜13房あったのに半分位になっています。やっとどうにか食べられそうな房が着色したので収穫してみました。

2007.12.01

植原ブドウ研究所から苗木が送られてきました  キャンベルアーリー・スチューベンに続きノースレッドも貰われて行くことになりました。我が家では噛み切れない肉質と孤臭が受け入れられず、遂に米国系品種は無くなってしまうことになりました。一方チャナーは食感の良さと上品な甘さが好評です。
 残るチャナーとロザキだけでは物足りなくて、適当な新しい欧州系早生品種を探して、無謀にもリザマートとC.G.88435を夏に注文していたのです。そしてようやく植原ブドウ研究所から苗木が送られて来ました。
 カタログによるとどちらも裂果するようですが、皮ごと食べられるブドウが希望なのでやむをえません。適当な雨よけを工夫するしかありません。

到着した苗木 根を水に浸け吸水  3年前と同じ箱に入って送られてきました。
 今回は2度目の購入だったからか後払いの郵便振替用紙での支払となります。
 今回の苗木は2品種ともMTC苗のためか前回購入したチャナーより少し細いですが、台木と接木部分はしっかりしています。
 早速根を水に浸け吸水させておきました。

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